熊谷ユニバーサルデザインブロック

熊谷市は埼玉県内で初めて、2001年に「交通バリアフリー基本構想」を策定し、移動の円滑化を進めてきました。
熊谷市はさらに、民間企業や障害を持つ当事者の人とともに「モノを開発」するという一歩進んだ取り組みをしました。

熊谷市では2001年に「交通バリアフリー基本構想」を策定し、中心駅・熊谷駅とJR籠原駅の周辺が歩きやすくなるよう、整備を進めてきました。
この基本構想の中で熊谷市は「車イス利用者」と「視覚障害者」の相反する不便さを解消しようとしました。

視覚障害者にとって、歩道と車道の境目を知るために『横断歩道から歩道へ上がる2cm』は重要です。逆に車イス利用者にとっては段差を上がるのにひと苦労します。
「熊谷UDブロック」は、通常の横断歩道から歩道への接続部は2cmのまま残し、UDブロックの一部分の段差をなくし車イスを動きやすくするように開発されたブロックです。

設置した交差点

ブロックが設置された横断歩道。
車イスのところまで合計3本のラインが見えますが、手前の一区切りは2cmの高さのままです。

奥の区切りの部分が『UDブロック』です。


ブロック拡大

UDブロックを拡大したもの。

2cm高さのひとつの区切りの中にシマをつくり、溝の部分だけを段差を解消して0cmとしています。
この溝を車イスのタイヤが通れば段差なしとなるわけです。


これをはめ込んでいる区切りのなかで、「シマ」を青色にして遠くからでも目立つようにしています。
シマの大きさは17cmのブロックを2つ合わせた34cmとして、
フラットな溝の部分は視覚障害者が白い杖を振る25cmほどの幅に合わせています。

交差点への設置は2003年から始まり、駅周辺500mを中心としたバリアフリー特定経路を中心に、60ヶ所(2006年時点)に設置されています。

このUDブロックは、視覚障害者や車イス利用者等、当事者のほかにコンクリート関連の設計会社などと熊谷市との協力により開発されたもので、試作したものを当事者の人たちが使って、改良を重ねたそうです。
設置したあとも、当事者や大学福祉学科の学生も交えた事後検証も検討しているとのことでした。


現場で実体験してみると、段差なしの部分は手動車イスでも上りやすいです。
視覚障害者と車イス利用者がそれぞれ必要と感じている『段差の有無』という全く逆の要望を、簡単なブロックの設置で解決したこと、
また当事者が設計段階から参加し、意見がきちんと取り入れられていることは、行政と民間のつながりができていることも含め、
すばらしいことだと感じました。


参考: 熊谷市HP内 「熊谷UDブロック」 のページへのリンク


ユニバーサルデザインへの取り組み 目次にもどる