ユニバーサルデザイン・バリアフリーの定義

 

<バリアフリーとは>

 近年、「バリアフリー(barrier-free)」という言葉をよく耳にするようになった。「バリアフリー」という言葉は、英語で「barrier free」と綴る。辞書によると、用語の意味は以下のようになる。

Barrier

  1. (通行を阻止 ・規制する)障壁;柵、関門;(鉄道の)改札口;境界線
  2. (_に対する)障害、妨げ

free

  1. 家・国民などが)独立している、自由な、他国に支配されていない
  2. 強制されない、自発的な
  3. (人・時間が)暇な、仕事(約束)でふさがってない
  4. 無料の;ただで入場できる
  5. 物惜しみしない、気前のよい;豊富な
  6. 奔放な、無遠慮な;ずうずうしい;ふしだらな
  7. つないでない、離れた
  8. 自由に通れる;障害のない

 バリア(barrier)の語源は、一本の棒を示す単語のbarである。一本の棒が行く手を阻む。その棒を取り除くのが、バリアフリーである。この棒は比喩であり、棒に変わるさまざまな街中に存在する障壁が、現在のバリアである。

 バリアフリーという言葉は、もとは建築用語である。車椅子を使っているときに、目の前に階段があると、その人は、もう先に行けなくなってしまう。そのようなことがないように、階段のほかに緩やかな傾斜のスロープを併設する。または、公共の建物を訪れる視覚障害者のために、点字の案内盤を設置する。このように、バリアフリーの本来の意味は、建築物や住環境における障壁を意味するものであった。それが近年、意味を広げ、「心のバリア」というように、障害者を取り巻くさまざまな不都合を「バリア」という言葉で一括りにし、それを取り除くという意味でバリアフリーと言う言葉や概念を用いるようなった。

<バリアフリーの内容>

 最近では、バリアフリーのバリアという言葉は、4つに分類されている。それは、以下のようになっている。

  1. 物理的バリア:道路や建築物の利用の防げとなる段差や施設の不備など、高さ、長さ、重さ、時間といったものが「行く手を阻む」ことをいう。
  2. 文化・情報のバリア:点字や手話通訳等の情報伝達の欠如や、文化に親しむ機会の制約など、見る,聞く、話す、嗅ぐ、味わう、触れるといったことができない場合に不都合が起きることをいう。
  3. 心理的バリア:偏見やあきらめ、憐憫など障害者に対する無知や無関心からくる偏見や差別のことをいう。
  4. 制度的障壁:能力以前の段階で、入学や就職の機会が与えられないことをいう。

 文化.情報面のバリアは、人が物事を判断する時に障壁となる。 人が何かを判断するとき、あるいはお互いに意志の疎通をはかるときに、情報要素を感知できないことで、さまざまな不都合が生じる。たとえば、視覚情報を十分に得られない人は、進む先が安全か否かを判断するのに大変な苦労をする。そして、ときには鉄道駅のホームからの転落事故のような重大事故が起こる。同様に、聴覚障害や言語障害でも、不便や危険を経験しがちである。このような情報の障害は、異なる種類の情報で補うことが通例である。例えば、点字は視覚情報を触覚の情報で補っている。また、文字の読めない人を想定して、公共施設のトイレなどでは絵文字が用いられている。

 心理的バリアは、人とつきあう時に障壁となる。それぞれの人の心の中にある感情や不確かな知識などによって生じた差別や、偏見、あきらめ、あわれみは、人が対等な個人としてつきあう際、大きな防げとなる。そして、多くのそのような感情を含んだ行動は、無意識の内に行われる。一見、何の問題もなく思える「優しくしてあげましょう」という言葉にしても、それが恩恵的な施しであれば、むしろバリアとなってしまう。また、「かわいそう」「がんばって」という言葉も、相手を「対等な個人」としてみていないと捉えられる場合もある。これらの心理的バリアは、社会の価値観が生み出したものと考えられる。心理的バリアのもう一つの原因は、その人個人ではなく、性別や障害者、高齢者などといった属性で評価してしまうことだと思われる。人種や民族による差別や、男子が先に書かれている学校の名簿など、社会の中の無意識の差別構造が心理的バリアの原因である。

 制度的バリアは、人が社会に進出する際に障壁となる。現在問題とされているのは、「欠格事項」と呼ばれるもので、障害を理由として、一律に資格取得や受験の制限をしているものである。制限の中には、他国では問題とされないようなものもある。例えば、聴覚障害者は薬剤師や看護婦の国家試験を受ける資格がない。地域にある学校に通いたいと希望しているのに、遠くの養護学校への就学通知が出されるということである。自動車運転免許のような、日常生活に必要な資格にも、欠格事項はある。これらの欠格事項をなくすために、1999年5月、「障害者欠格事項をなくす会」が発足し、現在、各省庁との交渉を行っている。

<ユニバーサルデザインとは>

 ユニバーサルデザイン(Universal Design:略してUDとも呼ばれる)とは、できるだけさまざまな人にとって、街や物を使いやすくすることです。また、この考えに基づいてつくられた街や物を指していうこともあります。

 ユニバーサルデザインは、わたしたちが生活をしていくさまざまな場所や状況にかかわるので、多くの分野でそれぞれの専門家が活躍しています。建築、住宅、交通、まちづくり、工業製品、日用品、情報などです。

 街や乗り物がどうも不便だ。今使っているモノのここを改善してくれたらありがたい。みなさんはときどきこう思われることがあるでしょう。元気な大人の男性でも、今日は重い荷物を持っているので、駅の階段を使わずに、エレベーターがあるといいのにとか。暗い夜道を歩いているときには、歩道と車道の段差が危ないと感じたりとかするでしょう。また、電化製品の使い方がわかりにくくて困るなど、暮らしの中でいろいろな不便を感じていることがあるでしょう。施設や乗り物はそれなりに便利になってきてはいます。しかし、どうでしょう本当に使いやすいものになっているでしょうか。実は、お年寄りや障害を持っている方はこうしたことが日常です。お年寄りや車いすの人にとって移動は大きなストレスです。エレベーターもエスカレーターもなく、何人もの人が抱えないと車いすの人が移動できないところもまだまだ多くあります。エレベーターがあると、お年寄りや障害者のかたが移動しやすいところは、重い荷物を持っていたり、妊娠中などの人にとってもありがたいのです。みんながありがたい施設やものづくりそれがユニバーサルデザインです。そのキーワードは「みんなにやさしく創る」です。社会は、性別、年齢、障害の有無など多様な人が暮らしています。ユニバーサルデザインを進めるということは、すべての人が使いやすい施設やモノを創っていこうという活動です。ユニバーサルデザインはちょっと難しい言葉ですが、ユニバーサルとは普遍的、万人の意味です。デザインは計画する、設計するという意味です。つまり、みんなの(万人の)ことを考えて計画するということです。また、ユニバーサルデザインはプロセス(構想・計画・設計)が重要です。

 「ユニバーサルデザイン」とは年齢、性別、身体、国籍など人々が持つ様々な特性や違いを越えて、はじめからできるだけすべての人が利用しやすいように配慮して、施設、建物、製品、環境、行事等をデザイン(計画・実行)していこうとする考え方ですから、特に大切なことは、それぞれの構想、計画、設計段階において「ユニバーサルデザイン」の考え方を取り入れることです。

 ユニバーサルデザインの趣旨は具体的な成果を問うというより、むしろ一人でも多くの人に使いやすい物や空間を実現させるためにデザインを行っていく姿勢であり、そのプロセスそのものです。 つまり、一人でも多くの人にとって利用しやすい施設づくり、参加しやすい行事、使いやすいモノになるよう配慮することであり、そのために努力することです。

<ユニバーサルデザインの7原則>

 ユニバーサルデザインとは、様々な人にとって、できる限り利用可能であるように、製品、建物、環境をデザインすることであり、デザイン変更や特別仕様のデザインが必要なものであってはなりません。ユニバーサルデザイン原則は、建築家や工業デザイナー、技術者、環境デザイン研究者などからなるグループが、協力しあってまとめたものです。

 これは、環境、製品、コミュニケーションなどを含めて、デザインがかかわる幅広い分野での方向性を明確にしています。これらの7原則は、既存のデザインの評価や、デザイン・プロセスの方向づけに使えるだけでなく、使いやすい製品や環境とはどうあるべきかを、デザイナーのみならず消費者を啓蒙するためにも活用できるものです。

<バリアフリーとユニバーサルデザイン>

 バリアフリーとはそもそも、この社会には高齢者や障害者にとってのバリアーが存在するから、それを取り除こうという考え方でした。階段があるから、スロープを取り付ける。バスは床が高いためリフトをつけるといった解決を行ってきました。こうした解決策では、障害者や高齢者は不必要な苦労を強いられているという場合もあります。遠くのスロープにわざわざ回ったり、いちいち時間をかけてリフトを動かしてもらったりしていました。特に障害者は、周りの人々に注視されたり、機器操作に他人の手を借りなければならないなどの精神的な負担を強いられてきました。ユニバーサルデザインはこうした苦痛を限りなく除くことのできる考え方ともいえます。ユニバーサルデザインは、施設を造るときは可能な限り段差をなくせば、スロープはいらないし、バスは最初から床が低ければ、簡単な装置で乗り降りができ、すべての人が使いやすくなるという解決策です。

 ユニバーサルデザインはつまり発想そのものが根本から違うと言うことが一番重要で、我々の考え方の差が一番大きいと言えます。つまり、ユニバーサルデザインは最初からすべての人々に対し、すべての人々を思いデザインすることによって、結果的に、バリアーが最初から存在しないモノを作り上げる思想であり、運動といえます。もちろん、今までのバリアフリーで行われてきたものを否定するものではありません。バリアフリーとして展開してきたもので,すでに思想としてはユニバーサルデザインを取り入れたものはたくさんありますし、バリアフリーを追求していくとユニバーサルデザインに到達した具体例はたくさんあります。しかし、これからは明確にユニバーサルデザインを意識して物事を進めていくことが必要です。

<交通バリアフリー法>

 お年寄りや身体障害者が、交通機関をより快適に利用しやすくするため、鉄道事業者に、駅のエレベーター設置などを義務付ける「交通バリアフリー法」が施行されました。 正式名称は、「高齢者・身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」。その法律の経過は2000年5月10日に参議院において、全会一致で成立しました。参議院における審議段階で、衆議院において、附則第三条を「この法律の施行後十年を経過した場合に、移動円滑化のための事業 を実施する公共交通事業者等に対する運輸施設整備事業団の補助金の交付等の業務の施行の状況について検討 を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」としていたのを「この法律の施行後五年を経過した場合に、 この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」とする修正が行われました。 今後は、公共交通機関がどれだけバリアフリーの問題に力を入れるか、ということに視点が移ることになるでしょう。

 新設の駅の場合、利用者が1日5000人以上であれば、ホーム転落防止設備の設置、ホームまで車いすで行けるようなエレベーターなどの設置が義務づけられています。エレベーター内の広さや、通路の幅などの細かい規定もある。ただ、既にある駅などは「努力義務」になっています。 更に、駅等の旅客施設を中心とした一定の地区における道路、駅前広場等のバリアフリー化を一体的に推進することにより、身体障害者等の自立した日常生活や社会生活ができるよう目指しています。

 高齢の方、身体に障害を持っている方等の公共交通機関を利用した移動の利便性・安全性の向上を促進するため、

  1. 鉄道駅等の旅客施設及び車両について、公共交通事業者によるバリアフリー化の推進
  2. 鉄道駅等の旅客施設を中心とした一定の地区において、市町村が作成する基本構想に基づき、旅客施設、周辺の道路、駅前広場等のバリアフリー化を重点的・一体的な推進

 以上の2点がこの法律の趣旨となっています(運輸省ホームページから引用)。

 これからの超高齢化社会に向けて、身体に障害のある人が増えることが予想され、それに対して交通機関も何らかの対策が必要なことは、いうまでもありません。またアメリカでは、障害を持つアメリカ人法でかなりの規制が加えられるなどの、諸外国の動向もふまえたものであることも見逃せないでしょう。交通機関を運営している事業者の努力を喚起することももちろんですが、国や自治体も一定の補助を行う必要があります。バリアフリーを進めるために、現行の施設に多額の設備投資を行う必要があります。事業者は、そのための費用を拠出する義務はありますが、限界もあります。その限界を超えるためにも、自治体にも協力してもらわなければなりません。このようなことは一定のルールが必要です。もちろん今までもルールはあったことはあったのですが、かなり狭い範囲であったり、鉄道、バス、航空機等それぞれバラバラにルールが作られたりしていました。この法律は、それらのルールを統一させ、体系化させたもので、今までよりもさらに一歩踏み込んだ内容となっています。

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